トラックに限らずドライバーを悩まされる問題が「エコノミー症候群」です。
長時間運転が原因で罹ってしまうこともあれば、車中泊など同じ体勢で長時間過ごすと罹ってしまうことも。元気に運転するためにも、エコノミー症候群について理解を深めることも必要です。
今回は、エコノミー症候群の症状や原因、対処法などを詳しく解説します。
目次
エコノミー症候群は血液の循環不良
「エコノミー症候群」は、一般的に俗称で呼ばれています。
しかし、医療界では「エコノミーシンドローム」または「LFT(ロングフライト血栓症)」と呼ばれ、正式名称は「静脈血栓症(じょうみゃくけっせんしょう)」です。循環器系の静脈で血液トラブルが起こることが原因です。
血液は、心臓のポンプ作用を利用して動脈から全身に流れ、静脈を通って心臓に戻ります。しかし、座りっぱなしで筋肉を動かさないと、血流は悪化してしまいます。そのため、脚の静脈に血栓(けっせん)という血の塊ができることがあります。血栓ができると、肺まで一気に飛んで肺動脈を詰まらせる恐れがあります。
肺動脈が詰まると、血液は体内を正しく循環できなくなります。このような症状を引き起こす原因の多くは、脚の静脈にできた血栓によるものであり、エコノミー症候群は「静脈の病気」とも呼ばれています。トラックドライバーなど、長時間同じ姿勢で過ごす人々は注意が必要です。
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エコノミー症候群の症状
エコノミー症候群には、様々な予兆や症状があります。
1脚の浮腫(むくみ)
エコノミー症候群の最も一般的な症状は、脚の浮腫(むくみ)です。
脚に血栓ができると、その場所に血液がたまり、静脈が圧迫されます。その結果、脚がむくんで、触ると柔らかくなります。脚のむくみは、足首からふくらはぎ、太ももまで広がることがあります。また、脚が熱くなり、痛みを感じることもあります。
脚の浮腫は、エコノミー症候群の初期症状であり、脚の血栓が進行する前に発生する場合があります。
2呼吸困難
エコノミー症候群が進行すると、血栓が肺動脈に流れ込む可能性があります。
この状態を肺塞栓症と呼びます。肺塞栓症が起こると、血栓が肺の血管を詰まらせ、肺の血液循環が悪くなります。その結果、呼吸困難や胸痛が生じることがあります。また、咳や嘔吐、不整脈などの症状も現れる場合があります。
肺塞栓症は、エコノミー症候群の合併症の一つであり、重症化すると生命に危険を及ぼすことがあるため、注意が必要です。
2下肢の痛み
エコノミー症候群によってできた血栓が、静脈内を流れて脚の筋肉に引っかかると、脚の痛みが生じることがあります。
具体的には、脚がむくんでしまうため、脚に負担がかかり、痛みやしびれが生じることがあります。脚を伸ばすと、痛みやしびれが悪化する場合もあります。また、脚を曲げたり伸ばしたりすると、痛みやしびれが和らぐことがあるため、動きがつらいと感じる人もいます。
エコノミー症候群の【原因】
エコノミー症候群の原因は先天性の症例以外では以下の3つです。
1血栓の発生
エコノミー症候群の主な原因は、長時間同じ姿勢で座り続けることによって脚の血流が滞ることです。
脚の血液が流れにくくなることで、血栓ができるリスクが高まります。血栓は、脚の静脈内にできる血のかたまりのことで、血液が凝固してできます。脚の筋肉が収縮することで、血液が体内を循環するために必要なポンプ機能が働くため、長時間同じ姿勢でいると脚の静脈内で血栓ができるリスクが高まります。
2水分の減少
長時間飛行機やバスなどで移動する場合、高度の上昇によって空気が乾燥していることがあります。
そのため、体内の水分が失われやすくなります。水分が減少することで、血液がドロドロになり、血栓ができやすくなります。また、空気の乾燥によって、皮膚や粘膜が乾燥してしまい、切れたりひび割れたりすることがあります。これらの傷口から細菌が入り込み、感染症を引き起こすことがあります。
3薬の服用
一部の薬物は、エコノミー症候群のリスクを高めることがあります。
例えば、女性が飲む経口避妊薬や、ある種のがんの治療に使用されるホルモン療法の薬は、血栓の発生リスクを高めることが知られています。また、長時間の移動中に睡眠導入剤や鎮痛剤を服用することで、体が完全に休息状態になってしまうため、血流の滞りや血栓の発生が起こりやすくなることがあります。
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エコノミー症候群の予防
ここでは、エコノミー症候群の予防と治療を解説します。
1適切な運動とストレッチ
座りっぱなしの時間が長い場合は、脚の筋肉が動かされずに血流が悪くなり、エコノミー症候群の発生リスクが高まります。
そのため、脚の筋肉を動かすことが重要です。長時間座っている場合は、1時間に1回は立ち上がって脚を伸ばしたり、歩いたりするように心がけましょう。また、足首を回す、つま先を立てるなどの簡単なストレッチを行うことで、筋肉を刺激し血流を促進できます。
2適切な姿勢と血行促進グッズの利用
座席の位置や角度を適切に調整し、正しい姿勢を維持することも予防につながります。
また、エコノミー症候群の予防には、血行促進グッズも有効です。コンプレッションストッキングや足首に巻くタイプの圧迫ストッキング、エアロチェアなどのエクササイズ器具、マッサージャーなどがあります。これらのグッズを使うことで、筋肉の動きを促し、血流を良くできます。
3適切な飲水と栄養補給
エコノミー症候群の予防には、適切な飲水と栄養補給が大切です。
飛行機や長時間のバスの場合は、乾燥しているため水分補給が必要です。また、脱水症状が進行すると血液がドロドロになり、血流が悪くなるため、適度な水分補給が必要です。さらに、飛行機内やバス内での食事は栄養バランスが偏りがちなので、適切に水分を摂るよう意識しましょう。
エコノミー症候群の治療
ここでは、エコノミー症候群の治療について解説します。
1抗凝固療法
抗凝固療法は血液をサラサラにする薬を使用する治療法です。
エコノミー症候群の標準的な治療法で、ヘパリンという注射剤やワルファリンという経口薬が含まれます。ヘパリンは、血液が凝固するのを防ぐために、血液中の特定のタンパク質を阻害する作用があります。
一方、ワルファリンは、ビタミンKの働きを抑制して、血液が凝固するのを防ぐ作用があります。抗凝固薬は、投与中に血液を定期的に検査し、効果を確認することが必要です。
2血栓溶解療法
血栓溶解療法は、血栓を溶かすための薬剤を使用する治療法です。
これには、組織型プラスミノーゲン活性化物質(t-PA)や尿素酸などの薬剤が含まれます。血栓溶解療法は、特に深部静脈血栓症において、エコノミー症候群を合併する場合に有効であるとされています。ただし、この治療法には、出血のリスクがあります。
3予防的処置
エコノミー症候群の治療には、病院内での予防的な処置が含まれます。
これには、圧迫ストッキングや足首までの加圧療法、そして筋肉運動の促進などが含まれます。特に、手術後や長期間の寝たきり生活の患者に対しては、予防的な処置が重要です。また、航空機内での長時間のフライトを行う場合には、定期的にストレッチ運動も重要です。
エコノミー症候群は水を飲んで足を動かすことで防げる
今回は、エコノミー症候群の中でもトラックドライバーが注意するべき行動や予防法、対処法を解説しました。
エコノミー症候群は2時間に1回は休憩して脚を動かして、ふくらはぎをほぐす。よく水をよく飲む。食事中にも水分補給を忘れないことがポイント。自分自身はもちろん大切な人のためにも、下記に気をつけて健やかなドライバーライフを過ごしてください。
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